牛の嫁入り

とある村に、とてもキレイな娘がいた。
その娘は、村一番の金持ちの子供で、その器量は誰もが認めるものだった。

娘も年頃になり、縁談の話が出るようになると
両親は良い嫁ぎ先が決まるように村の氏神様にお祈りに行った。

娘と両親が「良縁に恵まれますように」と手を合わせていたら
ちょうどそこに、隣村のブラブラという男が通りがかった。

この男は、ろくに働かずブラブラしている事から村人にブラブラと呼ばれていた。
いい歳なのだが、みすぼらしい恰好で、ほとんど銭を持った事が無く遊び歩いていた。

懸命に祈る親子を見てブラブラは悪巧みを思い付いた。
それは、神様のふりをして自分の元に娘を嫁がせる事だった。

悪巧みは功を奏し、何も知らない両親は嫌がる娘を説き伏せブラブラとの縁談を決めた。

嫁入りの日、駕籠(かご)に乗って娘は隣村へと向かった。
隣村では、ブラブラがそわそわしながら待っていた。

しかし、隣村へ向かう途中、駕籠かき達は娘の屋敷で飲んだ酒が回り、眠ってしまった。
そこへ通りかかったのは若いサムライ。

駕籠の中からすすり泣く声が聞こえたので、サムライは声をかけた。
娘は今までの経緯を話した。

哀れに思ったサムライは自分の駕籠に娘を乗せ、娘の駕籠には近くにいた牛を乗せた。
しばらくして目覚めた駕籠かき達はあわててブラブラの家に向かった。

今や遅しと待っていたブラブラは、やっと到着した駕籠を開けた。
いきなり駕籠が開いたので、牛はびっくりして暴れ出した。

せっかく用意した宴の準備も台無しになり、式は中止になった。

一方、娘はサムライと幸せに暮らしました。